2004年8月 4日
荊の城
サラ・ウォーターズという人のミステリ・サスペンス小説。いやー、翻訳物のミステリ小説なんて、読むの何年ぶりだろう(笑)。
あちこちの百合系サイトで評判が良かったので、買ってみました。
舞台は19世紀半ばのイギリス。ロンドンのサザークという下町で育った少女、スゥ。彼女は盗品売買を生業とする一家に育てられた孤児だ。
ある日、彼女は<紳士>という通り名を持つ旧知の詐欺師から、ある依頼を持ちかけられる。郊外の古い城に住む、ある貴族の娘の侍女になってくれというのだ。<紳士>の計画は、結婚詐欺。貴族の娘の持つ親からの遺産が目当て。そして<紳士>がその娘に近づく手配をするのがスゥの役目。
申し入れを引き受けたスゥは、目的のブライア城へおもむく。そして、件の娘、モード・リリーと出会う。ただの無垢な──騙しやすい──少女だと思ってきたモードに、なぜかスゥは惹かれていき……。
なんと言っても特筆すべきは、その描写の緻密さ。あたかも19世紀のイギリスにいるかのような錯覚すら受けます。世間と切り離された貴族の生活も、下町で喧騒とともに暮らす庶民の生活も、実に緻密かつ生き生きと描かれています。
それでいて読みやすく、どんどんと先を読みたくなるストーリー。複雑に絡まった人間模様が、読者の想像を超えた物語を描き出します。いったい、何度驚かされればいいのか。特に下巻ではもう衝撃だらけ。
そして、物語全体を貫く、スゥとモード、二人の想い。愛してるのに、愛する相手を切り捨てなければならない苦悶と葛藤。裏切られたことによる絶望と憎しみ。激情、と言うのがふさわしい愛。一見サスペンス小説ですが、やっぱりこれは愛がテーマだと思います。
愛するのにすれ違う二人、そんな二人を待ち受ける過酷な運命。とか書くと、大昔の少女漫画みたいですが、実際、ノリとしてはそれに近いものがあるように思えました。とにかくすごくドラマチックだし。
そんなわけで、百合っぽいのが苦手でなければ、文句無しにオススメ。百合好きなら絶対読んでおけ(笑)。あと、ヴィクトリア時代物好きも(メイドさんは出て来ないけど(^^;))。
「荊の城」(上下巻) サラ・ウォーターズ 著/中村有希 訳[創元推理文庫] 2004年4月23日初版発行 定価\940+税(上下巻とも)
→【bk1】 【Amazon】
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