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2005年1月20日

五人姉妹

 最近、SF分が足りないな~、とか思っていたところ、本屋で偶然見つけたのが本書。菅浩江さんかあ、昔よく読んでいたな。短編集なら軽く読めるかな、といった理由で購入。

「五人姉妹」「ホールド・ミー・タイト」「KAIGOの夜」「お代は見てのお帰り」「夜を駆けるドギー」「秋祭り」「賤の小田巻き」「箱の中の猫」「子供の領分」の短編9編を収録。どれも、SF的ギミックと、さまざまな人生模様を織り交ぜた、印象深い短編集でした。

(以下、ネタばれを含みます)

 短編集ですので、世界観などはそれぞれ異なるのですが、どれも近未来的で、「今起こってもおかしくない」と思わせる(不気味な)リアルさがあります。
「ホールド・ミー・タイト」「夜を駆けるドギー」あたりがその代表的な作品。どちらもネットを舞台にしたお話です。ネット依存的な生活を送っていた主人公が、そこから一歩踏み出そうとする──少々身も蓋もない表現ですが、さわやかな読後感を味わえた作品でした。
 あるいは、「五人姉妹」「秋祭り」といった、クローンをテーマにした作品。クローンの同一性と、そこからくる言いようのない不気味さが描かれています(それだけでは無いのですが)。

 また、この短編集で特徴的なのは、「老い」をテーマにした、あるいは作中に取り込んだ作品が多いということでしょう。表題作「五人姉妹」をはじめ、「KAIGOの夜」「賤の小田巻き」「箱の中の猫」で、何らかの形で「老い」が表現されています。というか、ほんの数行で数十年の年月を経たせるなんて、普通できませんよ。
 他にも、父子の葛藤(「五人姉妹」「賤の小田巻き」「お代は見てのお帰り」)、恋愛(「ホールド・ミー・タイト」「箱の中の猫」)、子供の成長(「夜を駆けるドギー」「子供の領分」)といった、実に普遍的なテーマの作品が、細やかな筆致で描かれています。

 とにかく、人(あるいは人のように見えるもの)の、心理描写が秀逸。私は、SFというジャンルは、「科学の進化した世界における人間、あるいは社会を書く作品」と考えているのですが、そういう意味では、文句なしにSFなのです。科学の発展した世界で、さまざまなことに悩む登場人物たち。一見、それは現在の私たちには無縁のようでありながら、本質は決して変わっていない、そう思います。

 あえてお気に入りを挙げろ、と言われたら、「お代は見てのお帰り」「夜を駆けるドギー」「箱の中の猫」でしょうか。
「お代は見てのお帰り」は、父子の葛藤と、もう戻れない過ぎ去った時間に対する後悔。
「夜を駆けるドギー」は、ネットワーカーならニヤリとさせられること間違いなし。それでいて、今起きてもおかしくない怖さ。
「箱の中の猫」は、遠距離恋愛ならぬ、遠時間恋愛。苦しくて、切なくて、そしてとても幸せな恋の話。
 これ以外の作品も、どれも甲乙付けがたい佳作ぞろい(実際、感想サイトさんをめぐってみると、実に好みがバラバラです(^^;))。
 SF好きはもちろん、そうでない人にも読んで欲しい一冊です。

五人姉妹
菅 浩江

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