絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク SS
叛乱の顛末

 あたし、エノラ・タフトと「夜明けの船」副長、エステルは、船の図書室で、導きの箱と地図のデータ入力を行っていた。
 データの入力も終り、一息ついたところで、その放送が艦内に鳴り響いた。
「夜明けの船は、我々が占拠した!」
「ヤガミ?」
 声の主は、ヤガミ。「夜明けの船」のRBパイロットで、参謀的な役割も果たしていた。あたしとしては、な〜んか、いけすかないというか、何考えてるか分からないから、あまり好きじゃない。
「叛乱ととってもらっても構わん」
「叛乱だと?」
 放送に対して律儀に返事をするエステル。心当たりは……あった。ここに来る前に、ヤガミとエリザベス船長が、導きの箱をどうするかで言い争っていたんだ。
「ね、ねえ? どうしよう?」
「落ち着け、エノラ。こういう時、まず必要なことは情報の収集だ」
 いつものとおり落ち着いた口調で、エステルは船長がいるはずのブリッジに通信を繋げた。ヴィデオフォンのウィンドウが開き、ブリッジの様子が映し出される。
「こちらエステル! ブリッジ、応答を!」
「やあ、エステル」
 イヤミったらしい声で答えたのは、船長ではなくヤガミ。やっぱムカツク、こいつー。
「どういうつもりだ。貴様、自分が何をしているのか分かっているのか!?」
 そのヴィデオフォンの片隅がふと気になった。え、これって……
「船長!?」
 船長が、後ろ手に縛られて、拘束されている姿が映っていた。
 そんなことはお構いなく、ヤガミは話を続けた。
「今からそっちに迎えをやる。導きの箱と、叡知の城で手に入れた古地図は手元にあるんだろ?」
「ヤガミ……今なら、悪いようにはしない」
「使い古された陳腐なセリフだ。言っておくが、我々は後戻りするつもりは無い。……図書室だ、急げ」
 ヤガミは誰かにそう告げると、通信を切った。ウィンドウが閉じ、図書室が一瞬、静まり返る。
「……ヤガミがそこまで思い詰めていたとはな」
 エステルにとってもこの事件は予想外だったらしい。
「どうするの?」
 あたしは不安を隠せないで、そうエステルに尋ねた。
「とにかく、導きの箱と地図を渡すわけには行かない。すぐにやつらが来る。ここを出よう!」
「う、うん」
 さすがエステル。だてに副長をやってない。……あたしの方がお姉さんなのに、情けないけど。

 あたしたちはひとまず、図書室の通気孔に隠れることにした。いま図書室を出て、ヤガミの仲間と鉢合わせたら終わりだ。こちらが逃げることは向こうも計算済みなはず。なら、逃げたと見せかけて向こうの手を探るのがいい──考えたのは全部エステルだけど。
 隠れ終えるとほぼ同時に、アキとポイポイダーが図書室に入ってきた。二人とも銃を構えている。……本気だ。
「アキ。エステルの部屋だけどこっちにはいないぞ」
 アキの端末から声が聞こえた。図書室は声が響くんだ。あの声は、ショウだ。
「ショウったら、勝手にあたしたちの部屋に入るなんて、ほんとにデリカシー無いんだから」
「しっ」
 そうだった。向こうの声が響くということは、こっちの声も響くんだ。
 幸い、こちらに気づく事なく、アキとポイポイダーは図書室を出ていった。しばらく経って戻ってくる気配がないことを確認して、あたしたちは通気孔から出た。
「今の会話を聞く限り、アキとショウ、ポイポイダーがヤガミに協力しているようだな」
「叛乱を起こしたのは、四人、ってことね」
「いや、その他に人質になっているみんなの見張りが、少なくとも一人はいるはず。できれば……みんなが人質になっている場所がわかるといいんだが」
「これからどうするの?」
「もちろん、叛乱を鎮圧する!」
 エステルは鋭い目つきで、そう言い切った。
「そうこなくっちゃねー!」
 あんなとこにこそこそこ隠れているのは、私も性に合わない。やっぱり頼りになるなぁ、エステルは。
 って、あたしの方がお姉さんだっての……。

 エステルの立てた作戦は、
「まずは、捉えられているクルー達の居所を確認しよう」
というものだった。
「そんなことできるの?」
 エステルは、微笑みながら「簡単にわかる方法がある」と言った。あ、笑うと結構かわいいかも。
 そんなことを思っていた隙にエステルは走り出した。あたしもあわてて後を追った。
 エステルが入り込んだのは、BALLSコントロールルーム。BALLSというのは、夜明けの船の整備システム、もしくはその端末であるボール型メンテナンスロボットの事を言うんだけど。
 BALLSのシステムはこの船のメインコンピュータとは別系統になっているらしい。それを利用して、BALLS経由で船内の様子を知ることができた。それでみんなが食堂にいるのは分かった。けど。
「こんなときだってのに緊張感無さ過ぎー」
 お兄ちゃんなんか呑気に料理なんか作ってるし。
「おかしい……見張りらしき者がいない」
 その時、一体のBALLSから緊急通信が入った。誰かがこのコントロールルームに近づいてきているらしい。慌ててウィンドウを開くと、そこにいたのはアキたち。
 急いでコントロールルームを出ると、既にアキたちの姿がすぐそこまで近づいていた。
「エノラ、早く!」
 あたしに逃げるよう促すエステル。あたしはエノラを信じて、その場から走り出した。 すぐにエステルがあたしの隣に追いつく。
「大丈夫なの?」
「ああ。BALLSたちに足止めを頼んできた」
 それならしばらく安心かな。でも。
「なんでばれちゃったのかな?」
「わからない。しかし、アキたちは真っ直ぐコントロールルームにやって来た。こちらの居場所が分かっていたとしか思えない」
「そんな! 全部お見通しだなんて」
 と、エステルは何か思いついたように顔を上げた。
「そうか」
自分の体を見下ろして、それからあたしを見て。
「こっちへ!」
そう言って、エステルはあたしの手を握って走り出した。

 たどり着いた先は、ランドリールーム。ランドリールームには誰もいなくて、空っぽの洗濯機と、洗いたてのタオルがあるだけだった。
 エステルは入り口の扉を閉じて、一息つくと、あたしの体を下から上までじろじろと見回した。……なんか、妙に恥ずかしい。
「な、なに?」
「服を脱いで」
「えぇっ!?」
「は、ハダカになれって言うの?」
「早く!」
 あたしがエステルのセリフの意味を図りかねていると、エステルは自分も服を脱ぎ始めた。無造作に上着を脱ぎ捨てると、金属の飾りが床にぶつかってがちゃりと音がした。そんなことも構わず、エステルは何の恥ずかしげも無く服を脱いでいった。普段は服に隠された白い肌が露わになる。
(綺麗だな……)
 こんな時だというのに、あたしはそんなことを思っていた。本当に雪のように白い肌。あたしだって、日焼けしてるとかそんなことは無いけど……やっぱり、ちょっと、うらやましい。
「なにをしている。エノラも早く脱げ」
「って、ちょっとぉ!」
 いつのまにか、エステルは下着まで全部脱ぎ捨てていた。
(そ、そりゃ女の子同士だけどさ。だからって素っ裸になる? ふつう?)
 そんなあたしの気持ちに気づくことも無く、エステルはあたしの方を向いた。その表情からは、恥ずかしいとかいう感情は微塵も感じられない。
「自分で脱げないのなら私が脱がすぞ」
 そう言うと、エステルは私の胸元に手を伸ばし、タイをほどき始めた。
「わっ、ちょ、ちょっ」
 なんとか反論しようとするが声にならない。だから、思わずエステルの手を振り払ってしまった。
「あ、ごめん……。だいじょうぶ、ひとりで脱げるから」
「そうか? なら早くしろ」
 エステルはそれに気にした様子も無く、ただ私が服を脱ぐのを見ていた。
(って、見られながら脱ぐのってむちゃくちゃ恥ずかしいよぉ〜〜)
 ようやく脱ぎ終わったころには、あたしの精神はヘトヘトになっていた。
「別に恥ずかしがることも無いだろう。私も女なのだし」
「恥ずかしがるわよっ、普通!」
「そういうものなのか?」
「そうなのっ!」
 やっぱエステルってどこかずれてる。美人だし、頭もいいし、行動力もあるんだけど……。
「なら、とりあえずこれを身に巻いておこう」
 そう言ってエステルが手渡してくれたのは大柄のバスタオル。たしかに、これなら体は隠せる。体に巻き付けて、それを腰のあたりで紐で結ぶ。
「よし、行くぞ!」
「い、行くってどこに?」
「まずは追手の目につかないところだ!」

 あたしとエステルは、狭い通路を全力で走った。曲がり角を右に折れ、次の角を左、その次は真っ直ぐ進んで階段を降りて……わざとだよね、こんな判りにくいルート使うの。あたしだって、正直、自分が今どこにいるのかよくわからない。
「どうして? まさかあたしたちの匂いで追いかけてきたの?」
 あたしは走りながら、前を走るエステルにそう訊いてみた。
「いや、匂いなら服を脱いだぐらいでは消すことはできない」
「じゃあなんで!」
「我々の服には、万が一、海に落ちたときのために、位置や体のコンディションをモニターするチップが埋め込まれているんだ」
「そうか。それであたしたちの居場所がばれたのね」
「全部脱いだから、当分は大丈夫なはずだ」
 通路の陰になっているところを見つけて、あたしたちはそこで一休みすることにした。走りながら話していたせいか、あたしもエステルも息が荒い。
「これからどうしようか?」
「ヤガミの狙いは分かっている。この『導きの箱』と火星の古地図だ」
「あ、だったらさ。それと引き換えに人質になってる人たちを開放してもらったら?」
 うん。我ながらいいアイデアだと思う。
 なのに、エステルったら。
「それはできない」
なんて、あっさり言ってくれた。
「叛乱を起こした者の要求を飲むなど、私のいたネーバルウィッチの軍では、考えられない話だ。たとえ人質の身に危険が及ぼうとも、それだけはできない」
「でも……」
「そんなことをすれば、より大きな危険を生むだけだ。それは船長も分かっているはず」
「待ってよ! 言ってることはわかるけど、ここはあなたのいた軍隊とは違うのよ。ここは火星で、あたしたちは海賊でしょ?」
 エステルはほんの少し驚いたような顔をして──それは、あたしが今までに見たことの無かった表情だった──、
「たしかに、そうだな……」
そう言った。
 納得してもらったと思った、その時。艦内放送がエステルを呼ぶ声が聞こえた。これは、船長の声?
 すぐそばにあったビデオフォンには艦長室の様子が映し出されていて、そこには開放された船長と、ヤガミたちの姿が映っていた。向こうもこちらを確認して話しかけてくる。
「問題は解決したんだ。お願いだからもう出てきてくれないか?」
 そう言われても、信じられるわけ無い。当然エステルだって──
「わかりました。これから出て行くことにします」
 えぇっ!? ちょっと!?
「ですが、本当にみんなが安全か確認させてください」
 ヤガミが了承したのを見て、エステルは一度通信を切った。
「どうしたのよ、エステル? こんなの罠に決まって」
「分かっている。しかし、エリザベス船長がああ言うからには、よほど差し迫った事態になっているに違いない」
「あ……そうか。船長は、脅されてたからあんなこと言ってたんだ」
「そうだ。だから、船長たちをこれ以上危険にさらすようなことはできない!」
「うん」

 そして、艦内の通路で、あたしたちはヤガミたちと会うことになった。

 やって来たのは、ヤガミ、アキ、ショウ、ポイポイダー、そして船長。
「な、本当に叛乱はおさまったんだよ」
「そもそもこれには訳があってだな」
 なにか取り繕うかのように話しだす船長たち。だが、エステルはその言葉をさえぎった。
「もういいんです。船長に無理矢理言わせている事はわかっています!」
「いや、そうじゃないんだって……えっ?」
 エステルは、持っていた地図と箱を差し出していた。って、ど、どうしたのよっ!?
「この地図と箱はあなた方にお渡しします。さあ」
 エステルが本気だと向こうは判断したらしい。ショウがエステルの元に近づいてきた。手を伸ばして地図と箱を受け取ろうとした、その瞬間。
 エステルが、持っていた地図と箱を上に向けて放り投げた!

 あたしは思わず上を見てしまう。ど、どうするのよっ、エステル。
 と、目の前で、エステルがショウの首筋にハイキックをきめていた。そのままショウは廊下に倒れ込む。
 ぼんやりとそれを見ていたあたしの目の前に何かが落ちてきた。何か──って、箱と地図じゃない! 慌てて手を差し伸ばしてキャッチする。なんとかセーフ。
「エノラはそれを持って食堂に行け! そしてみんなを開放するんだ!」
「で、でも、エステルは!」
「私なら大丈夫だ。このぐらいの相手、どうと言うことは無い」
 確かに、エステルの強さはさっきのでよく分かったし、そもそもあたしがここにいたところで戦力にならないのは明らかだった。だったら、あたしはあたしにできることをしよう。
「わかった! すぐに戻るから、それまで頑張って!」
「ああ、頼んだぞ」
 背中越しに聞こえてくるエステルの声が──あたしを信頼してくれてることが、嬉しかった。

 食堂まで全力疾走。入り口に着いた時はさすがに息が上がっていた。
「ここ……開くのかしら」
 よく考えたら、閉じ込めたのならドアのロックぐらいして当然だろう。でも、ここで失敗したら、エステルが。
「ええい、なんとかするわよっ」
 あたしは力強くドアの前に一歩足を進めた。
 途端、いつも通り開くドア。
「えっ?」
 つんのめりそうになる体を、無理やり立て直す。と、パン! パン! と、いくつもの破裂音。でも、飛んできたのは銃弾じゃなくて、紙吹雪。
「あれ? エノラ。どこにいたんだ? エステルは一緒じゃないのか?」
 立ち尽くすあたしに、お兄ちゃんが訊いてきた。
「え? え? えぇーっ!?」

 結局、あの叛乱(ごっこ)は、エステルの誕生日を祝うための、ヤガミの考えたサプライズだったらしい。まったく、何考えてんだか……やっぱよく分からない男だ、ヤガミって。まぁ最後までそのことに気づかなかったエステルにこてんぱんにのされたみたいだから、いい気味だけど。
 誕生日パーティーも終わり、あたしは自室に戻ってきたけど、どうにも落ち着かない。
「ねぇ、MAKI、エステルはまだ起きてる?」
「はい。自室で起きているようです」
 艦内AIにエステルの様子を尋ねる。そっか、まだ起きてるんだ。なら。

「エステル、あたしだけど、ちょっといい?」
 エステルの自室のドアをノックすると、ドアはすぐに開いた。
「どうした、エノラ。もう寝ててもいい時間だぞ」
 セリフとは裏腹に、エステルの表情はどこか嬉しそうだった。
「うん、ちょっとエステルと話がしたくなっちゃって。ほら、パーティーの時はろくに話せなかったでしょ?」
 なにしろ、エステルは主役ということでみんなに囲まれてたし、あたしはあたしでショックでしばらくぼーっとしてたし。
「そうだな。入れ」
「おじゃましまーす」
 エステルの部屋は、とてもシンプルだった。きちんと整理されていて、ホコリの一つも見つからない。いかにもエステルらしい部屋だった。
「それにしても、今日は大変な一日だったな」
 エステルはデスクの前の椅子に腰掛けながら言った。私にはベッドに腰掛けるよう促す。
「ほんと。艦内中走り回る羽目になるし、叛乱には予想外のオチが来るし。だいたい、あの叛乱ごっこって、ヤガミが考えたの?」
「らしいな。まったく、似合わないことをするから……」
「あははっ。やっぱエステルも似合わないって思うんだ」
「それはな。ついでに言えば、私にそういう冗談が通じないということも少し考えれば判ると思うのだが」
「まぁ、それは……」
 確かに、エステルが冗談を言うのを見たことが無い……かもしれない。というか、今まで、それほどエステルのこと知ってるわけじゃなかったし。
「今日のエステル見てれば、判ったかもしれないわね」
「というと?」
「だって、エステル。ヤガミ──ううん、他の人たちと、世間話とかってしたことある?」
「それは……たしかに、ほとんど無いな。だが、それがなんだというのだ?」
「だからさ。あんまり他の人と付き合いが無いから、誤解されてる部分があるんじゃないかなーって、そう思ったのよ」
「…………」
「正直言うとね、あたしもエステルってなんかいっつも仏頂面で、付き合いにくそうな人だなー、って思ってたのよ。でも、今日、一緒に逃げ回って、いろんなことが判っちゃった」
「いろんなこと、というと?」
「なんていうのかなー。真剣すぎるほど真剣だってこと。それはたぶん軍隊ではすごく大事なことかもしれないけど……。ずっとそれじゃ疲れない? せっかく笑うとかわいいんだしさ」
「かわいい? ……私が?」
「うん。普段の姿とのギャップってのもあるのかもしれないけど、普通に笑ってたら、すごくかわいいと思う」
「かわいい、か……。そんなこと言われたのは久しぶりだな」
「久しぶり、って、誰かに言われたことあるんだ?」
 おっと、これは予想外の展開ですよ?
「もう、ずっと昔の話だ。エノラが生まれるよりもずっと、な」
「その人とはどうなったの?」
「死んだよ。戦場でな」
「あっ……ご、ごめんなさい」
「構わない。知らなかったことだし、戦場で死ぬのは、珍しいことじゃない」
「でも……」
「それに、さっきも言った通り、昔の話だ。過ぎたことをいつまでも考えていたら、前に進めなくなる。あの人もそう言ってた。その通りだと私も思う。」
「エステル……」
「それよりエノラはどうなんだ? グラムとはすこしは進展したのか?」
「ちょ、ちょっと! なんでお兄ちゃんのこと!?」
「見てればわかる」
 エステルは優しく微笑みながら、言った。
「というか、たぶん、気づいていないのはグラム本人だけじゃないか?」
 いくらなんでもそこまで酷くは……いや、ほとんどエステルの言う通り。たぶん、わかってないのはお兄ちゃんだけ。どうしてお兄ちゃんは──。やっぱり、あの人のことが好きなんだろうか。
「あ、すまない。落ち込ませるつもりはなかったんだ」
 エステルが弁解する。あたしは、そんなに落ち込んだ顔をしていたのかな。
「その……なんだ。エノラが落ち込んでいるところは見たくない。エノラにはいつも明るくいてくれてほしい。戦場にいると、私はどうしてもそういうことを忘れがちになるから」
 そう言って、エステルは。
 あたしの頬に口づけた。
「!!!」
「……我がネーバルウィッチの、戦場に出向く兵士に向けての……勝利のまじないのようなものだ。自慢ではないが、私のはよく効くぞ」
 そんなこと言われたって。そんなこと言われたって。ああっ、じゃあなんでエステルってばそんなに顔赤らめたりしてるのよっ! こ、こっちまで恥ずかしくなるじゃない!
 そうよ、全部エステルが悪いのよっ。エステルが、エステルが、エステルが……。
 こんなにドキドキするのは、きっと、エステルが、あたしのことを見ているから。だから、このドキドキはエステルに伝えなきゃいけない。だから。
「ねえ、エステル……」
「な、なんだ、エノラ?」
「今日、一緒に寝ていい?」

「おはようございまーす」
 朝、廊下ですれちがったクルーたちと朝の挨拶。何気ないことだけど、こういうのが大事だと思う。おじいちゃんも、「どんな立場に合っても、挨拶は忘れてはならんぞ」って言ってたし。
「おはよーっ」
 向こうから声をかけてきたのは、ショウ。その隣にいるのは……お兄ちゃん。ううん、決めたんだ。ちゃんと言わなきゃ。
「おはよう、ショウ、グラム」
「…………え? あ、ああ。おはよう、エノラ」
 ふふっ、お兄ちゃん……じゃなかった、グラムったら、なんかあっけにとられた顔してる。これだけでも結構あたしの気は晴れたってもの。
「お、どうした、グラム? 喧嘩でもしたか? それとも本格的にフラれた?」
 ショウがニヤニヤ笑いながらグラムを突ついている。ま、グラムに聞いたところでわかるはずも無いんだけど。
 そして、あたしの眼は、すぐ先に一番会いたい人がいるのを捉えた。小走りにその人に近づき、後ろから挨拶を交わす。
「おはよう、エステル……お姉さま」
「おはよう、エノラ。……その、お姉さま、と言うのはどうにかならないのか?」
「だーめ。あたしが決めたんだから!」
「その、かなり、気恥ずかしいのだが」
「あたしは嬉しいもん」
 そして、あたしは、エステルの手を握って、ブリッジへと歩きだした。

- fin -

あとがき


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