マリア様がみてる SS
可南子の恋物語

「ねえ、どうしてあんなことしたの?」
「あんな事とは……」
「私のこと、ずっと尾けていたんでしょ?」
 可南子ちゃんが自分の気持ちを祐巳に告げ、逃げ出し、花寺の学園祭もおわってしばらくしてからのこと。偶然可南子ちゃんと出会った私は、例の薔薇の咲く古い温室で、再び可南子ちゃんと向き合っていた。
 可南子ちゃんが私のことを尾けていた。そのこと自体は確かにショックだったのだけど。知りたかった。可南子ちゃんの本当の気持ちを。
「ですから、それは祐巳さまのためを思って……」
「どうして、私なの?」
「え?」
 可南子ちゃんは私のことを天使のような、と言った。でも、なんで私なのか。たとえば志摩子さんなら私でも納得してしまうかもしれない。由乃さんだって、傍から見たら可憐な美少女だし(中身がそうでないことはこれまでの付き合いでよく分かってるけど)。
「どうして私のことをそんな風に思ったのか、それが知りたいの。私って、親しい下級生ってあまりいないから、自分がどう思われてるか、ってやっぱり気になるもの」
「それは……」
「このままって、やっぱり良くないよ。このままじゃ、私、可南子ちゃんのこと嫌いになっちゃう……」
 せっかく知り合えたのに。それは、とても悲しいことだと思う。
「それは……その……」
「言えないことなの?」
「違います! そういうことじゃありません!」
 可南子ちゃんは、少し語気を強めて言った。
「私なんかのどこがいいの? 取り柄とか全然無いのに」
「ええ、ありません! ありませんとも!!」
 ……即答された。
「……少しは、躊躇してもいいんじゃない?」
 そんなことには構わず、可南子ちゃんは顔を赤らめながら、大声で、こう言った。
「私は、祐巳さまのスラっとしたおムネと、くびれのまったく無いウエストがたまらなく大好きなんですー!!」
「へっ?」
 ななななななななんですとー?
「ほら私って背高いじゃないですかそれでムネもそれなりに大きいんですよねでも小学校とかだとそれでからかわれたりしてそれがトラウマになったりしてあと肩こったりするしですからちっちゃい女の子って憧れちゃうんですよ特に胸までなかったりするともう最高です大きな胸ってなんか嫌らしく見えるし夏場はたいへんだしそれにひきかえスラッとしたバストの爽やかな印象はもうたまらないですなんていうの萌えですかとにかく胸なんて飾りです偉い人にはそれが分からんのですよハァハァ
 可南子ちゃんは、まるでマシンガンのように早口で自分の主張を申し立てた。
 ……なんか、すげームカツクんですけど。
 これでも一応気にしているんだ。そりゃ、ムネの大きさは女の子の本質じゃないのは分かってるけど、やっぱり気になるのが乙女心と言うもの。
 と、そこに。
「どうなされたんですか? 祐巳さま。げ、可南子さん……」
ひょっこりと顔を出したのは見知った1年生。瞳子ちゃんだった。都合のいいことに(そう、とても都合よく!)体操着を着ている。体育の授業でもあるのだろうか。
 私は瞳子ちゃんの後ろに回り込むと、彼女の脇の下を通しておなかに腕を回した。ちょうど、後ろから抱きすくめているようにも見え……っていうか、そのままよね。
「ちょっ、ちょっとっ、祐巳さまっ!?」
 真っ赤になってる瞳子ちゃんはとりあえず置いといて。
「可南子ちゃん、これを見なさい!」
 私は、瞳子ちゃんの体操着の裾に手をかけ、がばっとずり上げた。








「キャーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
 一番最初に復帰したのは、瞳子ちゃん。さっき以上に顔を真っ赤にして、とんでもない悲鳴を上げた。
「と、瞳子ちゃん、声大きい……」
 すぐ近くで大音量に当てられたせいか、まだ耳がキンキンする……。
「なななななななななんてことするんですかっ!! 祐巳さまっ!!!」
「いや、これにはいろいろと込み入った事情がありまして」
「どんな事情で後輩の服を脱がそうとするんですかっっ!!」
「まぁ……そのことは悪かったと思ってるわ」
「当然ですっ!!」
「前から小さいんじゃないかとは思ってたけど……まさか、ブラ要らず、だなんて、ねぇ」
「うるさいっ!!」
 そんな言い争い──瞳子ちゃんが一方的にわめいてるんだけど──をしていると、別のほうから小さな声が聞こえた。
「瞳子さん……」
「えっ?」
 瞳子ちゃんが後ろを振り向くと。
 そこには、目を潤ませて、手を組んで、頬を赤らめている可南子ちゃんがいた。
「瞳子さん……」
「な、なによ」
 その瞳はまるで
「これは運命のいたずらっ? それとも……ウフフフフフ」
恋する乙女のようで。
「祐巳さまよりもっっと理想的な超スレンダーなおムネの持ち主がこんなに近くにいたなんてっ!」
「はィ?」
 今だに状況がつかめていないっぽい瞳子ちゃんの手を、可南子ちゃんはがっしりと握りしめた。
「瞳子さんっ、お友達になりましょう」
「へっ?」
「いいえ。できればお友達以上の関係に……」
「ごっ、ごきげんようっ!!」
 瞳子ちゃんは、可南子ちゃんの手を振りきって、全力で逃げ出した。体操着なのでスカーフが翻ったり、スカートの裾がはためいたりすることは無いから、全力で走れる。それはもう、死に物狂いで。
「あぁ〜ん、瞳子さん、待ってぇ〜〜〜〜〜」
「待てと言われて待つやつがいるかぁ!!」
 瞳子ちゃんを追って、可南子ちゃんも駆けだした。でも根本的に足の長さが違うから。
「ほ〜ら、瞳子さん、もうすぐ捕まえちゃいます〜」
「捕まってたまるかーっ!!」
 さて、瞳子ちゃんはどこまで逃げきれるでしょう。

 そんな二人を見送ってすぐに、祐巳は誰かが温室に入ってくる気配を感じた。
「どうしたの、祐巳。今、瞳子ちゃんとあの可南子って子がここから走りだして行ったけど……」
「お姉さま!?」
 入ってきたのはお姉さまだった。私は脇目もふらずお姉さまに駆け寄り、抱きついた。
「お姉さまっ」
「ちょ、ちょっと、祐巳っ? ……どうしたの、今日は。まるで子供みたいよ」
 クスッと笑いながら、お姉さまも私を抱きしめてくれた。お姉さまの胸が私の頬に当たる。
 胸は女の子の本質じゃないとは言ったけど。やっぱりある程度は大きいほうがいいと思う。こんな時は、特に。
 お姉さまの胸をひとしきり堪能したあと、私はふと思い立ってお姉さまに尋ねてみた。
「お姉さま。お姉さまは私の胸の大きさなんて気にしませんよね?」
「え?」
 お姉さまはちょっと驚いた顔をして私の顔を見て、そして私の胸を見た。……ちょっと恥ずかしい。
「お姉さまほどとまでは言いませんけど……もう少し大きいほうがいいなぁ、って、ちょっと思って」
「何を言ってるの」
 お姉さまの声が少し険しくなる。
「ご、ごめんなさい……」
 やはりこういう話はお気に召さないようだ。
「祐巳はそのサイズだからこそ、いいんじゃない」
「へ?」
「い、いいえ、そ、そうよ。胸の大小で人間が変わるわけじゃないわ。ほほほほ」
 とか言いながら、なんで目をそらすんですか。
 オネエサマ、アナタモデスカ……。

 その後、「紅薔薇のつぼみにセクハラ疑惑!?」という話題がリリアンかわら版を賑わすことになるのだが、それはまた別のお話。
真美 「いや、ちゃんと証言をくれた人の顔写真には、モザイク入れたわよ。なのになんでそれが瞳子ちゃんだって判ったのかしら」
祐巳 「ドリル写ってるじゃん!!」

- fin -

あとがき


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