ガンパレード・マーチ SS
君が望むガンパレ

すかいてんぷる熊本店編

「おはようございますっ!」
 僕は味のれんの引き戸を開いた。今日はバイトの日なのだ。
 中からいつもの、演歌調のBGMが聞こえてくる。
 が。
 なにかが違う。
 そう。店内には、古ぼけたカウンターも、色あせた座敷の畳も、なぜか置いてあったはずのゲーム機も無かった。代りに、綺麗なテーブルと椅子、明るい照明。道路に面した壁にいたっては、全面ガラス張りになっている。
「おはようございます、速水君」
「ぁ、おやじさん……」
 そこにいたのは、おやじさんではなかった。
「善行司令……なんですか、そのカッコは……」
「……見てわかりませんか。店長ですよ」
 自称「店長」は、まるでレストランのウェイターのような格好をしていた。ただし、履いてるのは半ズボンだ。
「……なんで、司令が店長……それに、この店内は……」
「最近の戦況の悪化でね。急に前の店長が疎開することになったんですよ。それで、ここを軍が買い取ったんですよ」
 ……なにか、陰謀、いや、靴下の匂いがしなくもないが、それはとりあえず置いておこう。
「で、なんで司令が店長なんですか?」
「今朝、ね。異動の辞令が来たんですよ。」
「……異動?」
「ええ。“本日付けで、善行忠孝を、味のれん店長に任ずる”というね。さすがに驚きましたが……」
 そう言いながら、司令は、一枚の紙を目の前に差し出した。確かに人事異動書だ。準竜師の印も押してある。
「で……このファミレスのごとき内装は何なんですか?」
「趣味です」
 きっぱり。
「関東にね、“すかいてんぷる”っていうレストランがありましてね。私もよく通ってたんですよ。そこをモチーフにしました。名付けて“すかいてんぷる熊本店”!」
 ……開いた口がふさがらない、という事が本当にあるんだと、この時僕ははじめて知った。
 とりあえず、どこからつっこむべきか悩んでると
「ボサッとつっ立ってないでよ。通行の邪魔でしょ〜?」
 ……この声は、新井木。
 以前からここで一緒にバイトをしているのだが、どうも彼女とは相性が悪かった。顔をあわせるたびに口喧嘩の毎日だ。
 めんどくさいが、無視するとかえってうるさいので、声のした方を振り向いた。
「…………………………」
「……あにさ?」
 そう。そこにいたのは確かに新井木だ。だが、何をトチ狂ったか、真っ白いフリルのついたブラウスに明るいピンクのスカートを履いていた。スカートの上には淡いピンクのエプロンをまとい、それを腰の後ろで大きなリボン状に結んでいる。他にも服のあちこちにかわいらしい赤いリボンがあしらってある。胸元は大きめに開いていて、首に巻いてある天使の羽をデザインしたリボンタイがいいアクセントになっている。
「似合わねぇーっっっっっ!!!」
「あ、あんですとー!」
 考えてみてほしい。極端にやせぎす、かつ、小柄なボディ(もちろん胸など無い)に、ばっさりと極限まで短いショートの髪。しかも、走ってないと死んでしまうかのごとくちょろちょろと動き回り、口調は女とも思えない。こんな奴が「かわいらしさ」を最優先事項に作られた服を着て、似合うはずが無いのだ。
「ちょっと、顔貸しなさいよ」
「ま、まて、話せば分かる!……一体なんだよ突然。うわぁ」
 すでに雰囲気は一触即発。いつでも校舎裏にレッツゴーな気分だ。もう僕たちを止めることは誰にもできないだろう。
「ところで、新しいバイトの子がいるのですが……紹介していいですか?」
 あっさり止められた。どうやら店長でも「真面目な雰囲気」になるらしい。
「新しい……バイト?」
 それは嬉しい知らせだった。これで少しはギスギスした職場の空気も良くなるだろう。仕事も少しは楽になりそうだ。
「えっとねー、ののみです」
 ………………………………
 そりゃぁ、職場の空気は良くなるかもしれない。だけど、9歳児に何をやらせるっていうのさ!? 僕の仕事が増えるだけじゃないのか?
「店長……なんでこんなのばっかり……」
「趣味です」
 きっぱり。
「……店長、それじゃただの変態ですよ……」
「……変態、ですか?」
「ええ」
「変態……変態……へんたい……」
 いや、そう何度も繰り返さなくても。
「変態……はじめての響きです」
 そんな事言われても……
「変態……そうですね。一生に一度ぐらいは変態もいいかもしれません」
 いいのかっ?
「変態…………やっぱ、嫌ですね」
 そうでしょうそうでしょう。
「変態呼ばわりされるの嫌なら、まともな人雇ってくださいよ……。田辺さんなんかどうです? 真面目に働いてくれそうじゃないですか」
 そう言うと、善行店長はしばらくうつむいて、そっと小声で話しかけてきた。
「これは内緒なんですが……」
「はい」
「胸の大きな人は苦手なんですよ……」
「………………」
「昔、ひどい目にあいましてね……」
「あら、どんな目にあったのかしら?」
 突如、後ろから声が割り込んだ。
 でも私は笑わない。私は信じられる。この声の持ち主を知っているから。

 翌日。すかいてんぷる熊本店が閉店した。戦況は、日増しに悪くなっている……。

── to be continued...? ──

あとがき


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