マリア様がみてる SS
大きな靴

 日曜日の午後。私は特にすることも無く部屋でのんびりとしていた。
 でも、そんなのはすぐに退屈に取って代わってしまう。
「令ちゃんの所でも行ってみるかなぁ……」
 それで退屈が紛れるかは少し微妙だけど。他に行く当てもなかったし、何よりこうして部屋で一人で悩んでるのは性に合わない。
「よしっ」
 勢いよく起き上がると、その勢いのまま、私は部屋を出て、靴を履いて、玄関のドアを開けた。開けると同時に外の空気が流れ込んでくる。初夏の空気は清々しく、体の中から綺麗になれる気がする。
 玄関を出ると次に感じたのは強い日差し。空気は澄んでいるのに日差しは強く、あまり長く当たっていると汗ばみそうな陽気だった。もちろん、令ちゃんの家はすぐ隣だからそんな心配はないんだけど。
 歩いて20秒たらずで令ちゃんの家の玄関に到着。玄関の引き戸に手をかけると、扉は何の抵抗もなくガラガラと開いた。
「不用心だなぁ……」
 家に誰かいるとはいえ、鍵ぐらい掛けておいてもいいと思う。
 玄関の中は、外の陽気とは裏腹にひんやりとしていて、気持ちよかった。
「おじゃましまーす」
 勝手知ったる従姉妹の家。それでも一応小さな声で挨拶をして靴を脱ぐ。廊下に上がり、振り向いて脱いだ靴を整えようとして、私はそこにもう一足の靴があるのを見つけた。明るめのブラウンの紐無しのシューズ。全体は曲線的なデザインで、履きやすそうで、なおかつかわいらしい。
「令ちゃんのだ」
 いかにも令ちゃん好み、といった感じだけど、私の靴より一回り大きい。並べてみるとそれがよく分かった。
「どんな感じなんだろ、令ちゃんの靴」
 そんな事を思い、なんとなく履いてみた。
「うわぁ、ぶかぶか……」
 当たり前だけど。令ちゃんの靴は私には大きすぎて。踵が余ってしまって、少しスースーする。
「やっぱり……大きいなぁ」
 令ちゃんと私は違う。そんな事をふと思った。
「分かっては……いるはずなんだけどね」
 いつも近くにいるから。ときに近すぎて、ギクシャクすることがあるくらい。
 そのまま立ち上がって少し足踏みしてみる。ぶかぶかな靴は脱げそうになったけど、それでもちゃんと私に付いてきてくれた。
「くすっ……令ちゃんみたい」
「何やってるの? 由乃」
 突然、背中から声を掛けられた。一瞬、身体が硬直する。
「れ、令ちゃん……おどかさないでよ」
「名前呼んだだけだよ。で、なにやってんの? こんな所で」
「えへへ。令ちゃんの靴、履いてたの」
「私の靴って……由乃じゃサイズ合わないでしょ?」
「うん。ちょっとね、履いてみたくなったの」
「???」
 私は靴を脱いで、廊下に上がった。令ちゃんはイマイチよく分かってない顔をしていたけど、
「で、私の部屋来るんでしょ? じゃ、先行ってて。今、お茶の用意するから」
そう言って振り返ると台所に向かって歩き始めた。
 こっちの行動が見透かされているのがちょっと悔しくて。だから、軽くいじわるしてやることにした。
 ぎゅっと、令ちゃんを背中から抱きしめる。
「よよよよよよ由乃っ!?」
 まるで聖さまに抱きつかれてる祐巳さんみたい。そんなことを思った。もっとも、あの二人とは身長差が逆だから、私の腕は令ちゃんのお腹のあたりを抱きしめることになるんだけど。
 それでもその反応が満足いく物だったので、さらにサービスして背中に頬ずりなんかしてみる。
「由乃……」
「前にさ、令ちゃんと一緒に歩きたい、って言ったよね」
「う、うん……」
「あれ、今も変わらないから」
「…………」
「令ちゃんと一緒なら、どこにでも行けるよ、きっと」
 たとえ水たまりに入っても。きっと平気だと思う。
「うん。私も由乃と一緒に歩いていく。ずっと、一緒に」
 もう令ちゃんは慌てたりしてなくて。私と同じように私をぎゅっと抱きしめてくれた。──それが、とても嬉しかった。

- fin -

あとがき


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