ガンパレード・マーチSS
みんなでお昼

「みんなー、 昼飯にしようぜー!」
 5121小隊の昼休みは、こんな風に昼食の誘いから始まる事が多い。その日もプレハブ校舎の教室ではそんな声が響きわたっていた。
 その日、声をかけたのは滝川陽平だった。
「そうですね。じゃ行きましょ」
「ののみもごはんたべる〜」
「あ、わ、私もご一緒していいですか?」
「うん! まきちゃんもいっしょにたべるの〜」
 滝川の誘いに応じたのは、森、ののみ、そして田辺の3人だった。他のメンバーはすでに外に出ていたり、溜まっている仕事があるという理由で断ったりしていた。
「どこで食べるんです?」
「弁当あるからさ。食堂兼調理室にしようぜ!」
「わかったわ」
 4人でぞろぞろとプレハブ校舎1階の食堂兼調理室に向かう。だが、この時、女性陣が揃ってやけに大きなバッグや紙袋を持っていることに滝川は気づかなかった。

 どかっと食堂の椅子に座る滝川。そして弁当を取り出す。弁当といっても、ご飯に梅干し、レトルトのミニハンバーグとコロッケという、きわめてシンプル──というか、手抜きなものだ。もっとも、滝川にとっては味とか栄養よりも量の方が重要なので、彼自身は全く気にしていなかったが。
 (そういえば、この連中と昼飯食うのって初めてだな……)
 ふとそんな事を思う。普段は速水や来須を誘う事が多いのだが、今日に限って二人とも弁当を持っていなかったのだ。
「よいしょっと」
 森が自分の弁当を取り出す。それを見た滝川は凍りついた。
「も、森……なに、それ?」
 森の弁当箱は……弁当箱と言って良いのだろうか? 三段重ねの大きな重箱だった。おせち料理でも入っていそうな雰囲気である。
「……どうせ私はよく食べますよ。そんなにジロジロ見ないでください……」
 そう言いながら重箱を広げる森。どれも手の込んだ料理がいっぱい詰まっている。
「いや、よく食べるって言っても……」
 (これじゃ若宮先輩並だぜ。)
 さすがにそれを口に出すことはしなかったが。
 現実から目をそらすようにののみの方を見ると、ののみはかわいらしいお弁当箱をテーブルの上に出していた。ウサギの絵柄が彼女にぴったりで、こちらまで微笑ましくなるような風景──
 と、ののみは持っていたバッグの中から、もう一つ弁当箱を取り出して、テーブルの上に置いた。
「あれ? その弁当は?」
「えっとね、こっちがののみのでしょー。でね、こっちがたかちゃんにもらったの〜」
「ああ、なるほど」
 瀬戸口がののみをかわいがっているのは滝川も知っていた。
「でね、これがあっちゃんにもらったの〜」
 そう言いながら、サンドイッチの入ったバスケットを取り出すののみ。
「速水……? あいつ、弁当無いって言ってなかったか?」
「でね、こっちがみおちゃんからのでね。これがいいんちょからもらったの〜」
「……おい」
 さすがは小隊のアイドル、ののみ。合わせて6人から弁当をもらっていた。しかも午前中だけで。
「はぁ……。すごい人気だな。でも、そんなにもらっても食えないだろ?」
「ううん、ぜんぶののみがたべるのよ」
「……え?」
「たかちゃんがね。いっぱいたべないとおおきくなれないぞ、って言ってたの。だからののみいっぱいたべておおきくなるんだー」
「いや、でも……」
 7人分の弁当なんて自分でも食えないと滝川は思った。
「それにね。たべものをそまつにしちゃめーなのよ。おしゃくしょうさんがいっしょうけんめいつくったから、かんしゃしてたべないとめーなの」
「そっかぁ。えらいね、ののみちゃんは」
 森がののみの頭をなでる。ののみはほめられて嬉しそうだ。
「そうだ! 田辺はまともな弁当だよな! ……って? 田辺?」
 田辺の姿はそこには無かった。見回すと、調理場の方でなにやらやっている。
「ご、ごめんなさい。ちょっと待ってていただけますか?」
 そういうと、田辺はこちらに向かって歩いてきた。一抱えはあるような巨大な鍋を両手で持って。
「……なに? その鍋」
「お昼ごはんですよ」
 どん、と鍋を床に置く。その鍋の中を覗いて、滝川は絶句した。
「……じゃがいも?」
「はい。うち、貧乏だからお弁当持ってこれなくて……」
 鍋の中は、ジャガイモで埋めつくされていた。どうやら、この鍋で茹でていたらしい。
「で、この間思い切って準竜師に陳情してみたんですよ。そうしたら、これを送ってきてくれて……」
「これって……この中身、全部?」
「は、はい。ジャガイモ60Kgです」
「……これ、全部田辺が食うの?」
「え? ええ、そうですけど……」
 不思議そうな顔で答える田辺。それが当たり前だという風で。
「本当ならもう少し欲しいんですけど……。戦争中ですしね。贅沢は言えないですよね」
 (……田辺ん家が貧乏な理由が分かった気がするぜ……)
 そんな事を思いながら、滝川はもんどりうって倒れた。
「あら? 滝川君、ご飯いらないの? じゃ、私もらうわよ」
「あ、ののみね、コロッケさんほしい〜」
「あ、あの、お肉、頂いていいですか? あ、ありがとうございます」
 床に転がって泣いている滝川を無視して、女性陣は楽しく食事を始めた。

 その日以来、滝川は一人で味のれんで昼飯を食べる事が多くなったそうである。
「……うちの女ってさ、変なやつばっかだよな」

- fin -

あとがき


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