マリア様がみてる SS
マリ○様がみてる

「…………なんじゃい、これ」
 乃梨子は、その像の前でポカンと口を開けたまま立ち尽くしていた。
 今日、乃梨子は受験を受けるためにここ、リリアン女学園に来たはずだった。 だが、校門をくぐり真っ先に目に入ったのは、その、異様な像だった。
 おやじ、だった。
 鼻と口の間にもじゃもじゃと髭を生やした、やや中年太りなおやじ。
 頭にはふわっとしたつばの小さな帽子をかぶっており、右腕と右足を上げて──ちょうど、ジャンプした瞬間をかたどった様だった。帽子には、丸で囲まれた、アルファベットの「M」。
「あら、受験生の方かしら?」
 と、乃梨子がその像に見とれていると(乃梨子「見とれてないッ!」)、後ろから声をかけられた。
「あ、は、はい。そうなんですけど……」
 振り返ったそこにいたのは、この学校の生徒とおぼしき少女だった。軽くカールした柔らかそうな長い髪と、穏やかな微笑みが印象的な美少女だ。そう、まるでマリア様のような──。
「ごきげんよう」
 その少女はニコリと微笑みながら言った。急に乃梨子の心臓が少しだけ跳ね上がる。
「ご、ごき、ごき、ごき……」
「……好きなの? ゴキ○リ
「誰がっ!!」
 あんなものを好きなんてやつを私は見た事が無い。もしいても、一生おつきあいしないだけだ。
「そうなの……残念
 あんですとっ!?
 乃梨子は、この目の前の美少女に対する印象をわずか15秒ほどで変える羽目になった。
「ところで……この像、なんなんです……ぁ、こんな所に亀が」
 気を取り直して説明を訊こうとしたとき、乃梨子の目の前を1匹の亀が横切って行った。それほど大きくない亀は、ゆっくりと像のほうに向かって進んでいく。
「なんで学校の中に亀が……?」
 ますます分からなくなる乃梨子。と、その亀が像の前に来た、その時。
 像が、跳ねた
「!?☆●◆▼×!」
 声にならない悲鳴を上げる乃梨子。
 像はそのまま片足で亀を踏みつける。驚いた亀は、首も足も尾も甲羅の下に隠した。その甲羅を、像は思い切り、蹴った。
「!!」
 亀は勢いよく地面を滑りながら、乃梨子に向かって飛んでくる。
「危ないっ!!」
 ドサァッ!!
 乃梨子は先の美少女に勢いよく押し倒された。次の瞬間、亀は乃梨子のいた場所を勢いよく通りすぎて行った。
「大丈夫?」
「は、はい……なんとか……」
 その時乃梨子の顔は、その美少女の二つの膨らみに、見事に押しつぶされていた。
(こ、これは……別の意味でヤバイかも……)
 息ができなくて。
「ぁ、ぁの……苦しいんですけど……」
「あ、あら。ごめんなさいね」
 ようやく少女がどいた時には、乃梨子は息も絶え絶えだった。まるで三流エロゲーのような展開だと思いつつも、乃梨子は先程からの疑問を投げつけた。
「あ、あの、さっきの亀は……?」
「亀よ。ああやって蹴られた亀にぶち当たって、毎年何人もの死傷者が出てるの。あなたも気をつけてね」
「なんでそんなもん放置してるんですかっ!?」
「さぁ……なんでかしら?」
 そんなかわいらしく首を傾げられても困ります。
「っていうか、あの像はなんなんですか?」
「見て分からない? マ○オ像よ」
「…………」
「たとえばほら、これを投げつけると」
 少女はどこからか毒々しい色の一抱えもある大きなキノコを取り出し、その像に投げつけた。キノコは像に命中する。
 すると、像は、みょみょみょみょ、という奇妙な音を立てて、巨大化した
「なんでーっ!!」
「あら、○リオといえばキノコで巨大化するに決まってるじゃない。知らない?」
「知りませんっ!」
 ゲーム機といえばプ○イス○ーショ○しか持ってない乃梨子には、任○堂の文化は激しく意味不明だった。
「この状態で花を踏みつぶすと、火の玉を投げる様になるわよ。見たい?」
「見たくないですっっっ!!!」
「そう……残念だわ」
 ……本気で残念がっている様だった。
「あの……あなたは……」
 何者だ、この女。
「私? わたしは1年の藤堂」
 その時、二人の女生徒が近づいて、彼女に声をかけた。
「ごきげんよう、志麻子さん
「あら、ごきげんよう、裕巳さん吉乃さん
 ……なんか、ものすごいパチモン臭がするのは気のせいですかっ?
「志麻子さん、どうしたの? この子?」
「今日、リリアソに受験に来たらしいんだけど……」
 ……今、なんて言った?
「あ、あの、今、この学校のこと……」
「え? リリアがどうかしたの?」
 りりあそ、たしかにそう言った。
「こ、ここは、リリアじゃ無いんですかっ!?」
「あぁ、リリアなら隣よ」
「よく間違える人いるのよねー」
 乃梨子は大慌てで受験票を取り出す。そこにはしっかりと「リリア女学園」と書いてあった。きっと菫子さんが書き間違えたに違いない。だからさっさと老眼鏡を買えと言ってるのに。
「……なんでこんな紛らわしい名前つけるんじゃいっ!!」
「まぁ、早稲田の隣のバカ田大学みたいなものね」
 ご存じの方も多いと思うが、バカ田大学はバ○ボンのパパの出身校である。
「そんなんあるかっ!」
 そう叫ぶと、乃梨子は校舎に背を向けて、校門に向かって走り出した。こんな学校、誰が受けるものか。どうせ本命は別にあるんだ。
「あ、さっきの亀」
「へっ?」
 どぐぉわぁっ!!
 どこをどう通ってきたのか。とにかくさっき蹴られた亀が、走りだした乃梨子に突撃した。乃梨子の体は弾き飛ばされ、2回宙返り3回転半ひねりを加えられたあと、
べしゃりっ!!
地面に叩きつけられた。
 2,3度痙攣したあと、乃梨子の体はぴくりとも動かなくなった。
「おーい、生きてる?」
 へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「勝手に殺すなっ!!」
 がばっと乃梨子は体を起こした。頭から血が吹き出たり片腕が変な方向に曲がっていたりしているが、とりあえず無事のようだ。
「うん、このタフさなら、リリアでも十分やっていけるわね」
「そうね。亀に弾き飛ばされて生きてるなんて珍しいわ」
「だからそんなもん野放しにするなぁっ!」
 もう、絶対この学校には来ない。
 乃梨子は固く心に誓い、ふらつく足どりで校門をくぐり、帰宅の途に着いたのであった。
「くすっ」
「どうしたの? 志麻子さん?」
「あの子……気に入っちゃった(はぁと)

 ぞぞぞぞぞっ。
 帰る途中の乃梨子の背筋を悪寒が走った。
 ってゆーか、早く病院行けよ、キミ。

 もっとも、リリア願書を出せば受かるようなむちゃくちゃへっぽこな学校なので (ちなみに、入学者の半数以上が「間違えた」人間である)、あとで乃梨子の元に合格通知が届き、再び乃梨子を恐怖に陥れる事になる。さらに、京都に仏像を見に行ったせいで本命の受験ができず、結果として乃梨子はリリアに通う事になるのだが──まぁ、それは別のお話。

「絶対、いやーーーーーーーーーーーーっっ!!」

- fin -

あとがき


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