ちっちゃな雪使いシュガー SS
Snow Again

第1話

 教室の窓から見ると、外は一面の雪景色だった。昼前から降り出した雪は、気が付けば町の姿を白く染め上げていた。
 ……そうか、もうそんな季節なんだ。
 降り積もる雪を見ると、今でも思い出す。あの子のことを。
 この雪は、あの子が降らせてるのかな。それともまだ修行が続いているんだろうか。
「サガさん、どうしたの? ぼーっとして」
 呼びかけられた事に気づいて、慌てて声のした方を振り向く。
「あ、グレタ。あ、ううん。なんでもないの。さ、帰りましょ」
 あたしは席を立って、机に掛けてあったリュックを手に取った。リュックを背に担いで、もう一度、窓の外を見る。
 雪は静かに降り続けていた。
「……どうしたの? サガさん。外なんか見て?」
「あ、あははー、ごめ〜ん」
「もう。明日から試験なのよ。そんな調子で大丈夫なのかしら?」
 教室を出て、階段を降りて、昇降口に向かう。昇降口から外を見ると、色とりどりの傘が白い景色の中に花を咲かせていた。
「……サガさん、本当に大丈夫? 風邪でもひいたりしたら承知しないわよ」
……また、少しぼーっとしてたみたい。……そうか。もう三年も経つんだよね。
 あの子が帰ってから。
 もう三年も経つんだし……友達になら、少しぐらい話してもいいかもしれない。
「ねぇ、グレタ」
「何?」
「季節使い、って、知ってる?」

「きせつ……つかい?」
「そう。雨や風やお日さまや雪を操る妖精。魔法の楽器を奏でて季節を操るの。こんなに小さいんだけどね……」
 そこまで言ってグレタの顔を見る。あぁ〜、なんか目つきが変だよぉ〜〜。
 そうだよね。普通信じられないか、こんな事……。
「ご、ごめんっ。なんでもないから……」
「サガさん、その話、誰かから聞いたの?」
「えっ?」
「驚きましたわ。わたくしが昔おばあさまに聞いた話とそっくりなんですもの」
「おばあさま?」
「ええ。まだ小さい頃、よくおばあさまにこの話を聞きましたの。何度もその妖精たちを探して、見つからなくて、『おばあさまのうそつきっ』って思いましたわ。大きくなって、あれはただのおとぎ話だと思ってたんだけど……」
「グレタッ! その、おばあさまって、会えない?!」
 あたしは思わずグレタの肩をつかんでいた。
「きゃっ、ちょ、ちょっと、サガさん……。残念だけど、もう会えないわ」
「どうして?」
「もう何年も前に亡くなってますもの」
「あ、ご、ごめん……」
「別にいいわ。それよりサガさん……もしかして、その妖精が、見えるの?」
「ううん。昔は見え『た』んだけどね。今はもう……」
「そうなの。…………ねぇ、よろしければ、その妖精の話、聞かせてくださらない?」
「え……うん!」
 あたしは夢中になって、話した。出会った時のこと。一緒に遊んだこと。きらめきを探したこと。喧嘩をしたこと。そして、別れのこと……。
「そうでしたの……。うらやましいですわ、サガさん」
「えっ、でも、ほんと迷惑ではあるんだよ。いたずら好きだしワガママだし……」
「でも、話してるときすごく楽しそうでしたわよ」
「え、えっと、それは……その……」
 うわぁ、なんかすごく恥ずかしい。
「わたくしにもそんな友達がいれば……」
「ん? なに?」
「い、いえ。なんでもありませんわ。それよりサガさん、明日から試験ですけど」
「ああっ、そうだった! ありがと、グレタ! 帰って勉強しなきゃ! じゃぁねー!」
「あ、あの、サガさん……」
 なんか、気分が軽いのは、グレタに話したせいだろうか。あの子のことを忘れていない、そんな自分が嬉しかった。

第2話

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