ガンパレード・マーチSS
芝村杯争奪戦

その3

「さぁ、続いて第2回戦、いってみましょー!」
 どうでもいいが、加藤、無駄に元気だな。
「2回戦のテーマは、これや!」
 加藤が出した紙に書いてあったのは「掃除」。
「次は負けまセン!」
 ヨーコさん、やる気まんまんだ。
「で……石津さん、どこ行ったんや?」
 校庭にはヨーコの姿しか見えなかった。
「さっき士魂号、ハンガーに戻してたよね? それから……どこ行ったんだろ?」
「壬生屋さんが一緒についていったはずだけど」
 と、その壬生屋が姿を現した。
「あ、壬生屋さん。石津さんはどないしたん?」
「えっと、その……士魂号から出るときに、ハッチに服を引っ掛けてしまい……それで今、着替えに行っていますわ」
「服、やぶけたん?」
「え、ええ……。ですからもう少しすれば来ると思いますよ」
 その時、石津が校舎の脇から顔を出した。
「あ、石津さん〜、待っとったで〜。早く来てや〜」
 だが、石津は来ようとしない。よく見ると、わずかに顔が赤い。業を煮やしたのか、新井木が石津の元へ走っていった。
「萌りん、どーしたのさー。ほら、早く……わっ!」
 新井木の足が止まる。と、すぐに石津を引っ張り出そうとする体勢に切り替わった。
「なんだよ、どうしたんだよ」
「なんか揉めてますね」
 必死で抵抗する石津だったが、やはり普段から走り回ってる新井木に体力で勝てるはずも無く、とうとう、姿を現した。
「!!!!!!」
 生徒たちの喧騒が止まる。石津の着ていたのは、

メイド服

だった。黒地のワンピースのロングスカートに白いフリルのついたエプロン。黒タイツはいつもどおりだ。ご丁寧に頭にはフリルカチューシャまでつけている。
「イィ、スゴクイィ!!!!」

男子生徒はガンパレード状態になった!

 皆様にお見せできないのが残念です。っていうか、俺が見たい(爆)。誰か描いてくれ(汗)。
「不潔です!」
 壬生屋の喝も聞こえていないようだった。
「はぁ……こりゃまた……。でも、似合うとるで」
「ねっ、かわいいよね! なのに萌りんったら恥ずかしがって出てこないんだもん。もったいないよ」
 顔を真っ赤にする石津。
「でも、どこにあったん? そんな服?」
「……詰め所の……ロッカーの中……私も知らない……」
「誰やろな? 持って来たの」
「………………」
「は・ら・せ・ん・ぱ・い。どこに行くんですか?」
 森が冷ややかな目を原に向ける。
「あら、森さん。ちょっとトイレに、ね」
「……どうせまた、誰かで着せ替え遊びでもするつもりだったんでしょう」
「うん。森さんでやろうと思ってたのに。残念だわ」
 森の顔がひきつる。
「う、ウチはあんな服似合わねっす!」
「しかたないわね。また新しいネタ考えてこなくちゃ。じゃ、また後でね」
 硬直していた森が、原に逃げられたと気づくのはその10秒後だった。

 一方。これを見て俄然ライバル心を燃やしたのが、ヨーコである。
「私も着替えテきまス!」
「ええっ、ちょっと、ヨーコはん?」
 言うや否や、どこかに駆け出していくヨーコ。
 数分後。
「お待たせデス!」
 そういって現れたヨーコの姿は、

和服にフリフリエプロン

というマニアックな服装だった。明るいグリーンの着物に、真っ白なエプロン。普段は下ろしている髪を纏め上げている。うなじが色っぽい。なぜか足にはローラーブレード装備。
「イィ、スゴクイィ!!!!」

男子生徒はまたガンパレード状態になった!

「……ヨーコさん、そんなんどこから調達したねん?」
「秘密にシテおいてくださいト言う事なので秘密デス」
「……誰だか知らないけど、なかなかやるわね」
「? 先輩じゃなかったんですか?」
 森が不信の目を(自称、トイレから戻ってきた)原に向ける。
「ひとの事をなんだと思ってるの……。とにかくあれは私じゃないわ。センスの方向性が違うもの」
「センス、ですか……」
「でも、悔しいけどなかなかのものね。普通は思いつかない組み合わせであれだけのものを作るなんて……」
「はぁ……」
 ため息をつく森。コスプレイヤーの考えは分かりそうも無かったし、分かりたくも無い、そんな表情だった。

「えっと……じゃ、二人とも準備はええ?」
 生徒達(主に男子)の騒ぎが収まったところで、加藤が声をかけた。
「……いい…わ……」
「オッケーです!」
「じゃ、第2回戦は掃除、っつーことで、10分以内にどちらが多くゴミを拾ってくるか! が勝負や! 場所はこの尚敬高校の敷地内!」
 二人に大きなゴミ袋が渡される。もちろん熊本市指定の炭酸カルシウム入りのビニール袋だ。
「それでは! れでぃ〜、ゴーっ!」
 加藤の合図と同時に二人が駆け出す。
「おおっと、ヨーコさん、早い!」
 さすがはローラーブレード装備である。
「で、どこまでいくんやろな……ぁ、こけた」
 さすがは運動力1である。
「石津さんは尚敬高校の校舎内に入って行ったぁっ。もうここからじゃ見えんな〜。じゃ、新井木ちゃん、中継頼むわ〜」
「は〜い! こちら第一中継車、新井木で〜す。萌りんの動きは、ボクがバッチリ伝えるから、よろしくね!」
「よしよし、感度は良好っと。で、石津さん、どこ向かってんのや?」
「現在、尚敬高校廊下を、玄関の方に向かって走ってます。なんか生徒がこっちの方ジロジロ見てるけど。やな感じだよねー」
 メイド服と5121の制服を着た少女二人が廊下を走っているのである。目立つのも仕方ない。
「ぁ、いま売店の前に来ました。そこで右に曲がって、一般教室棟のほうに入っていきました! そのまま教室に入ります! ぁ、追い出されました! どうやら授業中だったようです」
「…………………………なにする気やったんや? 石津さん」
「石津も石津だが、それを黙ってみてる新井木も新井木だな」
「いや、若宮さん、新井木、喋りまくってましたけど」
「わかってる! 言葉の綾ってやつだ」
 若宮のつぶやきに余計なツッコミを入れる滝川。
「そういえば、ヨーコさんはどうしたんですか?」
「……あそこだ」
 来須が指さした先、そこは5121小隊のプレハブ校舎だった。
「ヨーコさん……何やってんのや?」
「さっき、石津サンが壊した、ガラスとか拾ってマス」
 おおーっ、という全員の声があがった。
「なるほど、確かにゴミですね」
「石津さん、敵に塩を送っちゃったわね……」
「でも、よーこちゃん、いつこうしゃまえまで来たのかなぁ?」
「そういえば……さっき、校庭の端で転んでましたよね……?」
 そんな疑問をよそに、ヨーコは、割れた壁やガラスの破片をかき集めて、袋に入れていた。
「ヨイショっ、ヨイショっ……キャッ!」
 派手な音をたてて、ヨーコが、こけた。
「どうして何もない場所で転ぶの……?」
「あのローラーブレードが諸悪の根源だと思うんですが」
「……まだ履いてたの…………」
 その時、ののみが大声をあげた。
「めーなの!」
「ど、どうしたんですか? ののみさん?」
「よーこちゃん、いたがってるの。いたいのはめーなのよ!」
「おい、小杉のやつ、血流してないか?」
「やだ! 顔切れてるじゃない! 衛生官は?」
「……あそこだ」
 来須が指さした先、そこは女子校の校舎だった。
「……そういえば、さっき向こうでドタバタやってたわね……」
「わ、私呼んできます!」
 田辺が校舎に向かって走り出した。
「頼みましたよ、田辺さん!」
「誰か他に医療技能持ってる人はいないの?」
 原が全員を見回した。が、手を挙げる者はいなかった。
「…………ほんとに誰も持ってないの?」
「仕方ないだろ。こっちだって忙しいんだ。他の技能まで取る余裕は無いよ」
 茜が不満そうに言った。
「……って、大介。あんた、“天才”持ってるじゃない。こんな時こそその技能の使い所じゃない?」
「なっ……なんでそんな事知ってるんだよ、姉さん!?」
「ど、どうでもいいっしょ! そんな事! それより、できるんでしょ!? 無職なんだからこういう時ぐらい働きなさい!」
 茜の体が揺らいだ。どうやら、“無職”という言葉がかなりグサッと来たらしい。
「……分かったよ。でも、見よう見まねだからな。石津が戻ってくるまでだ」
 そう言うと茜は、来須と若宮に、ヨーコを詰め所に運ぶよう言って、自分は詰め所のほうに走っていった。
 程なくして、ヨーコが詰め所に運ばれてきた。詰め所にはすでに清潔な布団がしいてある。
「あちゃ〜。結構傷、深いな……」
「そんな事患者の前で言わないでよね。女の子の顔に傷なんて残したら承知しないわよ」
 若宮たちに付いてきた原が言った。
「無茶言うなよ! こっちだってちゃんとやってるんだぜ」
 そう言い返しながらも、茜は素早い手つきで傷を消毒していく。
「あとは? 痛い所あるか?」
「えっト、肩、痛いデス。右肩」
「……もしかして、転んだ時、手、ついたか?」
「ハイ」
 茜が頭を抑える。
「ダイジョブですか? 頭痛いデスか?」
「ぁぁ……頼むから、受け身ぐらい取ってくれよ。なんで手から落ちるんだよ!」
「ヨーコさんの……運動力じゃ……無理……」
「わっ、石津か……」
「後は……私がやるわ……。男の人は、出て……」
「なんだよ、それ?」
「服……脱がせないと診れないから……」
 とたんに茜の顔が真っ赤になる。
「そ、そうか。そういうことなら……」
「手当て……ありがとう……」
「頼まれたからやっただけだ」
 そう言って、茜は詰め所から出て行った。
 カーテンを閉めてから、ヨーコの上着を脱がす。
「……そんなにひどくないみたい……。とりあえず、吊っておく……」
 石津は、手際よくヨーコの右腕を固定した。
「この勝負、アキラメマス」
 ヨーコがつぶやいた。石津が怪訝そうな顔でヨーコを見る。
「私、トロイから、こんなにウマク治療、できないデス。やっぱり、ここは石津サンにおまかせスルです」
 石津は顔を背けながら言った。
「そんなこと……ない……。私も……不器用……」
「デモ、やっぱり衛生官は石津サンに任せマス。私はまた、整備、するデス」
「じゃぁ……手伝って……。最近……忙しい……から」
「ハイ!」

「えー、そんな訳で、結局2回戦、およびそれ以降は中止になりました〜」
 新井木が面白くなさそうに言った。
「あらあら。じゃぁ、田辺さんの一人勝ち?」
「そうなっちゃいますね……」
 校舎の片隅では、この勝負の賭けの配当が行われていた。はっきり言って、皆不満顔だ。田辺を除いては。
「仕方ありませんね。これも運命ですよ、きっと」
「で、どうなの? メガネ代は稼げた?」
「ええ。ありがとうございます」
 配当金を握りしめ、意気揚々と眼鏡屋に向かう田辺。
「フフッ、やっぱりヨーコさんにあの服を渡したのは正解でした」
 お前か、田辺。どこでそんなマニアックな服装覚えた。
「バイト先でちょっと借りたんですよ」
 バイト先……聞くのが怖いのでこれ以上の追求はやめておこう。
 と、その時! 予想だにし得ない出来事が!(某番組風に)
 田辺の後ろから走ってきた犬が、財布を奪い、くわえたまま走り出したのだ!
「ま、まってください〜。それは私の稼いだ、大事な大事なお金なんです!野良犬ごときにやれるようなものではないんです!」
 なにげにちょっとダーク、覚醒田辺。
 だが、もとよりトロい田辺、さらに走るたびにたらいが落ちてくる状態では、野良犬を追う事は不可能だった。

田辺の所持金が0!

「それデ、すごかったらしいデスよ?」
「そう……見たかった……かも……」
 翌朝。なんだかすっかり打ち解けた感じでヨーコと萌が校門に向かって歩いていた。
「よ、お二人さん。おはよう」
「瀬戸口サン、おはようデス」
「……お……はよ……」
「すっかり仲良くなったようだな。うん、結構結構」
 瀬戸口もすっかり立ち直っているようだ。そんな3人が校門に差しかかった時。彼らの前に人影が立ちはだかった。手にはハリセンを持っている。
「瀬戸口はん! オペレータの座を賭けて勝負や!」
 ビシィッ、と指を差し立ちはだかったのは、加藤。
「はぁ?」
 何か、一昨日も同じようなセリフを言ったような気がする。
「いやなー、昨日のアレでな。司会やっとったらなー、なんかこう、むっちゃ気持ちよかったんねん。やっぱウチ、話す方が向いてんねん」
「……だったら、陳情でもすればいいだろう…………」
「ふふふ、甘いな。瀬戸口はん」
「何が?」
そんな発言力は、ない!
「………………………………」
「……いば……れない……」
 萌、鋭いツッコミ。
「ふふふ、そうか。ま、いいだろう」
 その時、瀬戸口たちの背後から尊大な声が響きわたった。
「そ、その声は……準竜師!?」
 きらびやかな軍服に暑苦しい顔、後には黒塗りのリムジン。横には不機嫌そうな顔をした副官まで居る。間違いない。芝村準竜師だ。
「昨日の勝負は途中で終わってしまったようだしな。どうだ、瀬戸口。男なら受けんか、勝負」
 副官が頭を抑えるのが見えた。胃薬も用意した方がいいかもしれない。
「は、はい。いいえ、準竜師殿。自分にはその勝負を受けるメリットがありません」
「勝ったらプールチケット、はいうのはどうだ?」
「よーし、受けてやろうじゃないか、加藤!」
 瀬戸口、180度方針変更。
「……馬鹿……だわ……」
 今日は毒舌が冴えます、石津さん。
「ところデ……どうして準竜師さんハここニいるデスか?」
「なに、従姉妹殿に呼ばれてな。おお、来た来た」
「待たせたな、従兄弟殿」
 校舎側から歩いてきたのは、芝村特有の尊大な歩き方でやってきた舞と、その後をとぼとぼと、絶望しきった様子で歩く速水だった。舞は手元に紐のようなものを持っていた。その先端は、速水の首につながっていた。
(あれは……“犬の首輪ー!!”
 絶句する瀬戸口・加藤・石津・ヨーコ。
「こいつがお前のカダヤか。従姉妹殿」
「ああ。我等のために尽くしてくれるであろう」
 初めて聞く“カダヤ”なる言葉。だが、その言葉の響きには一片の甘さのかけらもなかった。
「……準竜師。そろそろ、次の予定が」
 副官が頭を抑えながら言った。
「分かっている……速水厚志。今日から芝村を名乗るがいい」
「というわけで、今日からお前は私のものだ、厚志。従兄弟殿公認だぞ」
 さらにうなだれる速水、いや、芝村厚志。
「さて、俺は公務に戻る。勝負に必要な機材は届けさせるからな。今度は俺を失望させるなよ」
 そう言い残して、準竜師はリムジンに乗った。
「さぁ、行くぞ、厚志。明日の勝負の計画を立てないとな」
「うわぁっ、紐を引っ張らないでよっ、舞っ!」
(昨日、何があったんだ……)
 その姿に、誰もが同情を禁じ得なかったと言う。

- fin -

あとがき


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