ガンパレード・マーチSS
しすぱれ

「えー、朝早くからすみません。転属命令が出ました。速水十翼長、滝川十翼長」
「「はぁ??」」
「あなたたちは、南の小島へ行ってもらいます」
「そんな! 僕はこれからちょっと生き方を変えて、偉くなって、最終的には魔王になって世界を恐怖のズンドコに叩き落す予定なんですけど」
「命令ですよ、速水十翼長。いや、いいところですよ、きっと。幻獣は出ないそうですし。いや、うらやましいことです」
 そういった善行司令の顔は、ちっともうらやましそうではなかった。
 こうして、僕たちは熊本を離れ、南の小島(ってどこなんだろう……)に行くことになった。

 島は小さな島で、山が海面から突き出ているような感じだった。島中が木で覆われているのでさらにそう見えるのだろう。山の頂上に、なぜか巨大な岩田君の像(もちろん踊っている姿だ)があるのが気になるといえば気になるのだけど。
「……気にしない方がいいぜ、きっと」
 滝川の言うとおりだ。そうこうしている内に、船は無事港に着いた。
「お、誰かいるぜ。迎えの人かな?」
 港には、男の人が立っていた。表情の見えない丸眼鏡にあごひげ。半ズボンの先から見えるすね毛はヒトウバンでさえ噛み付きたがらないだろう。
「……善行司令?」
「いいえ、違います。私は善行忠敬!」
 ……パチモン?
「上からの指令でお迎えに上がりました。さぁ、滝川君はこちらへ」
「え、お、俺?」
 そういうと、有無を言わさず善行さん(…………)は、滝川君を引っ張っていった。
「……あの、僕は?」
「すぐに迎えがきますよ」
 ……取り残されてしまった。海風が冷たい。
「兄上」
 と、ちょっと切なさ炸裂しかけたところに。滝川君が引っ張られていったのと反対の方から声が聞こえた。
「よく来てくれたな、兄上」
 振り向くと、そこにいたのは
「……舞!?」
 どうして舞が?
「……確かに、私は舞だが……。聞いていたのか?」
「聞いていた? え、いや、なんで舞がここにいるの?」
 何気なく訊いた、つもりだった。だが、それを聞いた舞は、寂しそうにうつむいた。
「……兄上は、私がここにいるのが嫌なのか?」
「そ、そうじゃなくって、ただ、なんでここにいるのかな、って思って、それで」
 ん? ちょっと待て? さっき、舞は何て言った?
「……舞、兄上って……?」
「妹が兄上を兄上と呼んで何が悪い?」
「ああ、なるほど……って、いもうとぉっ!!????」

 妹。いもうと。年下の女きょうだい。英語で言うとSister。
「妹って……僕はひとりっ子だよ!?」
「兄上は幼い頃両親と別れたからな……知らぬのも無理は無い」
 確かに、僕は幼い頃、両親と引き離されラボに入れられた……。あまり思い出したくない記憶だ。
「でも、あの時父さんと母さんは……」
「どっこい生きていた」
「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!???」
 思わず突っ込んでしまう。加藤さんと訓練したときに身に付けたツッコミ技能(レベル1)がこんな所で役に立つとは思わなかった。
「安心しろ。シャツの中とかではない」
「そんなネタ、今時の若いモンには通じないですよ、舞さん……」
「そ、そうなのか……。とにかく、生き延びた父上と母上はこの島にたどりつき、我々を育ててくれたのだ」
「じゃ、じゃぁ父さんと母さんは!?」
「行方不明だ」
「はぁ?」
「二日ほど前な。『ちょっと出かけてきます』と書いた手紙を残して消えおった」
「それ、行方不明って言うの……?」
「行方が知れないのだ。行方不明であろう?」
「は、はぁ……」
「その手紙には、もう一言書いてあった」
「何て?」
「『p.s. お兄ちゃんがこの島に来るから、よろしくね。美少年よ(はぁと)』とな」
「………………」
「その手紙を信じて、待っていたら、本当に来てくれた……私は嬉しいぞ」
 そう言うと、舞はちょっと顔を赤らめて下を向いた。
「……ほんとに美少年だし」
 さらに顔を赤らめて下を向く舞。本当に妹なの……? っていうか、なんで舞 ── 芝村舞 ── とうり二つなの?
「さぁ、行こう、兄上。我々の家に!」
「い、家って!?」
 そう言うと、舞は僕を引きずって歩き出した。

「さぁ、着いたぞ」
 舞に引きずられてきた先は、白い、大きな家だった。広い庭には洗濯物が干してあり、巨大な猫が日向ぼっこをしている。
「皆の者、兄上が来たぞ!」
 家の方に向かって叫ぶ舞。父さんと母さんは行方不明って言ってたのに……。
 と、玄関のドアがバタンと勢いよく開いた。
「わぁー、わぁー。おにいたまだー!」
 駆け出してきたのは小学生くらいの女の子。髪を両脇でかわいらしいリボンで結んでいる。
「……ののみちゃん?」
 女の子はその勢いのまま、僕に抱きついてきた。
「おにいたま。ののみね、おにいたまにあいたかったのよ」
 相変わらずの舌たらずな声でののみちゃんが言う。
「……おにいたま?」
「うん! おにいたまはののみのおにいたまなのよ」
 呆然としていると、玄関からもうひとり女の子が出てきた。
「にいさま! にいさまなんですね……?」
 三つ編みにした青い髪の毛。眼鏡。次のシーンが想像ついてしまうのは何故だろう?
 ガゴーン!
 突然、その子の上に金だらいが落ちてきた。思い切りすっころぶ彼女。そして割れる眼鏡。
「えへへ、ごめんなさい。でもにいさまに会えたんだから、このくらいたいしたこと無いです」
「田辺さん……」
「田辺? だれですか、それ? 私のことは真紀、って呼んでください」
「…………」
「ア、アニキ……なのか?」
 庭の方を見ると、赤と黄色に髪を染めた、背の高い女の子が立っていた。手にはオートバイに乗るときにはめるようなグローブをはめている。ちょっと、というかかなり怖そうな雰囲気だ。
「そ、その……はじめまして……。か、香織って、呼んでください……」
 その雰囲気とはうらはらに、おそろしく緊張した面持ちで女の子はつぶやいた。
「あーっ! あんちゃん! 待っとったでー!」
 後ろから声をかけられて振り向くと、そこにはピンク色の髪の女の子が、買い物袋を抱えて立っていた。
「あー、ぎょうさん美味いもの買うてきた甲斐があったっていうもんや! みんな、今日はパーティーやで!」
 ワーッ! 喜ぶ声があちこちから聞こえる。
「あ、うち、祭いうねん。よろしゅうなー」
 どこかうそ臭い関西弁で女の子は言った。
「お兄様、いらっしゃい」
 耳元でささやく声が聞こえた。
「わぁっ!」
 びっくりしてのけぞると、そこにいたのはちょっと大人っぽい娘だった。
「これから、お兄様とひとつ屋根の下で暮らせるのね。素子よ。よ・ろ・し・く」
 そう言ってウインクする。かなり色っぽい。
「兄君さま、はじめまして。未央と申します」
 庭の奥から出てきたのは、長い黒髪の袴姿の女の子だった。手には、鞘に収められた刀を持っている。
「これから兄君さまはわたくしがお守りいたしますわ。ご安心ください」
 そう言って刀を鞘から抜く。
「あ、危ないから刀はしまってよ……」
「あ、は、はい。すみません。つい……」
 つい、で刀を抜かないでほしい。
「にぃや……」
 玄関の奥から、小さな声が聞こえた。よく見ると、影から僕のほうを伺っている。顔はよく見えない。
「にぃや……萌は……う……ぁ……」
 女の子は、声にならない声をだすと、家の中に隠れてしまった。
「ハーイ! 兄チャマ!」
 今度は2階から声が聞こえた。色黒の、背の高そうな女の子だ。
「はじめまシて。ヨーコです。太陽のヨウ、なのデス。兄チャマの事、会ったばかりでよく知らナイから兄チャマの事チェキするデス!」
 ……どこの国の人だろうか。
「あぁっ、もうあにぃ来てるじゃん!」
 声が聞こえたかと思うと、その子は後ろから勢いよく抱きついてきた。
「えへへっ。ボクは勇美だよっ。今度いっしょに走ろうねっ、あにぃ!」
 女の子はジョギングをしてきたらしい。ショートパンツにタンクトップといういでたちだった。
「……あなた、兄クン?」
 玄関から、小さなお皿を持った女の子が出てきた。とりあえずうなずいてみる。
「きゃほ、やっぱり。今焼けたばっかりなの。これあげる」
 女の子が持っていたお皿には、クッキーが乗っていた。焼けた、と言っていたから手作りなのだろう。
「う、うん。ありがとう……」
 ひとつ手に取り、口に入れる。
「うん、美味しいよ」
「あはっ、その答え、YESだね。私は映。よろしくね」
「お兄ちゃん、おかえりなさい」
 そう言ってきたのは、ソバージュの髪にバンダナをつけた女の子だった。ジーンズ姿がよく似合っている。
「お兄ちゃんに会えるなんて……ウチ、ほんとに嬉しいス……」
 そう言うと、女の子は僕の胸に抱きつき泣き始めた。

── 2時間程泣かれました ──

 どうにか落ち着いたあと、舞 ── 「妹」の方だ ── に事情を聞いた。
 要は、彼女たちは5121にいた彼女たちと同型のクローン、ということらしい。
「でも、なんで妹なの? 血のつながりがあるわけじゃないんでしょ?」
「同じ父母に育てられれば、それは兄妹と言わぬか?」
「まぁ、それはそうだけど……」
「さらに言えば、われらは兄上と同じ遺伝子バンクから作られているからな。その面からも、まごうことなき兄妹だ」
「はぁ……」
「あと、な……これだけは知っていて欲しいのだが」
「なに?」
「我らは、本当に兄上に会えるのを楽しみにしていたのだ。兄がいるということは昔から聞いていたからな。だから……」
 そう言って、うつむく舞。
「う、うん。分かったよ。僕に何ができるかは分からないけど、君たちを悲しませたりしない。約束する」
「兄上……」
 そういうと、舞は僕に抱きついてきた。思わず抱きしめ返してしまう。舞の体は、思っていたよりもずっと小さくて頼りなげだった。
 舞が顔を上げた。潤んだ瞳で僕を見つめている。
「舞……」
 舞の顔がゆっくりと近づいてきた。頬が赤い。
 金縛りにあったかのように体が動かない。いや、むしろ舞の方に近づいていく。
 舞の吐息が感じられるくらいに近づいたそのとき。
「おにいたまーっ!」
 元気な声が聞こえてきた。思わず体を離す僕と舞。
「あーっ、まいちゃんばっかりずるいー。ののみもだっこしてー」
 そういって、抱きついてくるののみちゃん。
「えへへ。ぎゅー」
「しょうがないなぁ」
 苦笑するしかない。この子の笑顔には誰も勝てないだろう。
 だが、そんなほのぼのムードは5秒しか持たなかった。
「あ、お兄ちゃん、私もー」
「にいさま、その、よろしければ……」
「兄クン、私もいい? ほんと? その答えYESだね」
「アニキ、いや、その、なんだ……。わたしも……だっこ……」
「みんな、抜け駆けは無しだよー! あにぃ、そうだよね!」
「あんちゃん、ウチもウチもー」
「みんなで兄チャマにだっこシてもらうデス」
「にぃや……」
「お兄様、私を忘れちゃ嫌よ」
「兄君さまに抱きしめられるなんて……(ポッ)」
 こうして、突発的に「だっこ大会」は始まった……。

── 2時間程抱きつかれました ──

 翌朝。朝日が窓から差し込んでいる。空気は程よく涼しく、爽やかな朝──。な、はずなんだけど。ちっとも寝た気がしないのは何故だろう。
 眠い目をこすりながら、階段を降りていく。食堂から何かのにおいが漂ってきた。それにはあまり名前を付けたくない。あえて。
「おはよう……」
「              兄上
               おにいたま
               にいさま
               アニキ
               あんちゃん
 おはようございます! お兄様
               兄君さま
               にぃや
               兄チャマ
               あにぃ
               兄クン
               お兄ちゃん」
 ……元気だ。なんでそんなに元気なんだ。みんな。
「にいさま、庭で取れたばかりのトマトですよ」
「ほら、いっぱい食わないと強くなれないぜ、アニキ」
「にぃや……だいじょう…ぶ……毒は…入って……ない…わ……」
 (作者が)嫌になってきたので以下略。とにかく妹たちに朝食をひとつひとつ取り分けてもらった(「あーん」だけはなんとか勘弁してもらった)。

── 2時間程朝食にかけました ──

 もちろん、昼食(お弁当)も、2時間ほどかかったのは言うまでもない。

 そうだ。瀬戸口君にメールを出しておこう。「着いたらメールよこせ」って言われてたんだ。。
 『瀬戸口へ君へ。そちらの様子はどう? 僕は、どういうわけか、12人の妹に囲まれて、毎日楽しく暮らしています。全員友情・愛情度MAXなのに、争奪戦も起きないんだよ。ある意味怖いです。妹なので、“Hな雰囲気”にも持ち込めません。こんな生活がいつまで続くんだろう。
 でも、ほんのちょっとだけこの生活がいいと思っている自分がいることにも気づいています。このままいくと、いずれこの生活があたりまえになってしまうのでしょうか。
 ……慣れって、こわいですね。
 では。』

 黒服の人間達が延々と整列するホール。壇上で一人背を向けて、パイプオルガンを弾く白い服の男。
「第5世界は?」
「……第5世界、完全失敗です。派遣した全フットワーカーは挫折。26話まで持ちませんでした」
「どういうことだ」
「……申し訳ありません。あまりのへっぽこさに途中で投げ出したのではないかと」
「……(ピーーーーーー)や(検閲削除)以上のへっぽこアニメを作る組織があるのか。……いかがなさいましょう、ブランカ」
 白は、静かに微笑んだ。天井を見上げる。赤くなっていく、一つの星。
「……DVDプレイヤーを使用せよ。<前夜祭>と共に、“萌え”を探せ」
「御意」
「友よ……悲しいな。この程度の出来とは」
「は?」
 白は、パイプオルガンをぶっ叩く。ホールに不協和音が、流れていった。

 そのころ。
 滝川は、6畳一間の安アパートで、「超辛合体バンバンジー」の再放送に夢中だった。
「ちょっとまてー! ボキの出番はこれだけかぁ〜〜〜〜〜〜っ!?」
 はい、そのとおりです。

- fin -

あとがき


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